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遺留分の放棄とその方法

  • 文責:弁護士・税理士 小島 隆太郎
  • 最終更新日:2023年3月24日

1 遺留分の放棄

まず前提として、遺留分について説明します。

被相続人が死亡した場合、被相続人の遺産は、原則的には相続人に、法定相続割合に基づいて相続されます。

なお、遺産分割協議により合意があれば、法定相続割合以外の割合で相続をすることは可能です。

しかし、被相続人が遺言をしていた場合、特定の相続人や、相続人以外の人が、遺産の全部や大部分を相続または遺贈を受けるということがあります。

もっとも、遺産は、相続人の生活を維持するための存在としても意味を持ちます。

そのため、一定の相続人(配偶者、直系卑属、直系尊属)には、最低限の遺産の取得分が保証されています。

これが遺留分です。

遺留分を侵害している部分については、遺留分を侵害された相続人は、特定の相続人や受遺者に対し、金銭の支払いを請求することができます。

これを遺留分侵害額請求といいます。

そして、この遺留分侵害額を請求する権利を放棄することが、遺留分の放棄です。

2 遺留分の放棄の方法

⑴ 被相続人死亡後

便宜上、先に被相続人死亡後の遺留分の放棄の方法について説明します。

被相続人死亡後に遺留分を放棄したいという場合には、特に何もする必要はありません。

遺留分侵害額請求は、相続開始と遺留分を侵害する遺言・贈与を知ってから1年以内に行わねばならないとされているため、1年以上経過すれば、時効によって請求権は消滅します。

⑵ 被相続人死亡前

被相続人となるべき方がご存命のうちに遺留分の放棄をする場合には、家庭裁判所において、遺留分放棄の許可を得る必要があります。

被相続人となるべき方がご存命のうちは、不当な手段で遺留分権利者に対して遺留分の放棄を迫るということがあり得るため、家庭裁判所において、遺留分の放棄を認めてよいか否かを判断することになっています。

具体的には、遺留分権利者本人が、家庭裁判所に対して、家事審判申立書と付属書類を提出することで、手続きが開始されます。

手続きが開始されたとしても、必ず許可がなされるわけではありません。

最低限の生活保障としての役割を持つ遺留分を放棄してもよいといえるだけの事情が必要になります。

例としては、特定の相続人が家業を継ぎ、負債も全部引き継ぐという事情がある場合や、すでに遺留分に相当する額以上の生前贈与を受けているという事情等が挙げられます。