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公正証書遺言を作成する際の流れ

  • 文責:弁護士・税理士 小島 隆太郎
  • 最終更新日:2023年9月20日

1 公正証書遺言作成の概要

公正証書遺言は、公証役場において、証人立会いのもと、公証人を通じて作成するという形式の遺言です。

自筆証書遺言は遺言者本人のみで作成しますが、公正証書遺言は作成のプロセスにおいて、公証役場と公証人が関与します。

公正証書遺言作成までの流れは、①遺言者ご自身の財産の整理、②遺言の下書きの作成、③公証役場・公証人との調整、④公証役場における公証人による公正証書遺言作成、となります。

以下、それぞれについて詳しく説明します。

2 遺言者ご自身の財産の整理

遺言を作成する前提となる作業に、遺言者の方の財産の整理があります。

まず遺言者ご自身の財産を正確に把握しないと、どの財産を誰に相続ないし遺贈させるかを決めることができないためです。

また、遺言を金融機関や法務局での手続きで使用する際には、財産の正確な情報の記載が必要となることがあります。

具体的には、保有している預貯金口座については銀行名・支店名・口座番号、不動産については地番や家屋番号など登記情報に記載されている情報、株式などの有価証券については証券会社名・口座番号・保有株式や投資信託の銘柄などの情報を明確にします。

そのうえで、誰にどの財産を相続または遺贈するかを決定していきます。

3 遺言の下書き作成

遺言者の方の財産を正確に把握し、誰に相続または遺贈するかを決定したら、公正証書遺言の下書きを行います。

実務上は、下書きを兼ねて自筆証書遺言を作成することもあります。

相続開始後の、金融機関における手続きや、不動産の登記等を円滑に進めることを考慮し、財産の情報は正確に記載することが大切です。

また、遺言を通じて相続人や受遺者に伝えたい事項等があれば、付言事項として記載することもできます。

弁護士などの専門家に公正証書遺言の作成を依頼している場合には、遺言者の方の財産の情報やご要望等をヒアリングし、専門家が公正証書遺言の下書きを作成することもできます。

4 公証役場・公証人との調整

遺言者の財産に関する情報がそろい、遺言の下書きの作成が済んだら、公証役場に公正証書遺言を作成したい旨の申し込みをします。

一般的には、まずメール等で遺言の下書きを公証役場に提出します。

そして、公証役場に遺言の内容を確認してもらい、指摘等があれば修正をします。

遺言の内容の確認に並行して、公証人の手数料の見積もりと、公正証書遺言作成の日時や場所について調整を行います。

公正証書遺言を作成する場所は、原則としては公証役場ですが、遺言者の方の身体的なご事情などにより外出が困難である場合には、公証人がご自宅等へ出張することもできます。

公証人手数料の見積もりの際には、遺言に記載する財産の評価額が必要になります。

具体的には、預金通帳、不動産登記事項証明書・固定資産評価証明、有価証券レポートなど、評価額に関する客観的な資料を用意し、写し等を公証役場に提出します。

公正証書遺言の内容が確定し、公証人手数料の算定も済みましたら、公正証書遺言の作成日時と場所を確定させます。

5 公証役場における公証人による公正証書遺言作成

公正証書遺言作成当日は、指定された日時に公証役場へ行きます。

一般的には、遺言者の方の身分証明書と、実印、印鑑証明書、公証人手数料を持参します。

そして、公証人が作成した公正証書遺言の内容等について説明を受け、遺言の内容に問題がないかどうか確認をします。

遺言者の方のご希望通りの内容であることを確認することができましたら、証人2名の立会いのもとで、公正証書遺言が作成されます。

公正証書遺言には、遺言者の方の署名押印、証人の署名押印をします。

公正証書遺言は、原本、正本、謄本があります。

原本は公証役場に保存され、遺言者は正本または謄本を取得します。

正本または謄本を紛失、汚損してしまっても、原本が公証役場に保存されていますので、新たに発行してもらうことが可能です。