遺産分割で揉めやすいケースと対応方法
1 不動産の価値が占める割合が大きい場合
相続財産の中で、不動産の価値が占める割合が大きい場合、不動産を取得する相続人と不動産を取得できない相続人との間で紛争になることがあります。
例えば、相続財産が1億円で、その内訳が、不動産が6000万円、現預金が3000万円、株式等の有価証券が1000万円というケースを例にします。
相続人が長男と次男の2人の場合、長男と次男の法定相続分はそれぞれ2分の1となりますので、それぞれ5000万円ずつ法定相続分があることになります。
長男が不動産を相続した場合は、代わりに次男に1000万円を支払わなければなりませんので、そこで支払う預貯金がないと、紛争になり得ます。
2 相続財産が5000万円以下の場合
家庭裁判所で遺産分割になっているケースの約70%が、相続財産額が5000万円以下のケースです。
「うちは揉めるほどの相続財産はないから」と言われる方もおり、相続財産が多いほど揉めると思われがちですが、実際の事例を見るとそれは誤りで、相続財産額が少ない方が揉めやすいことが分かります。
3 生前に多額の贈与を受けている場合
相続人の全員が平等に贈与を受けていれば揉めないかもしれませんが、被相続人の生前に特定の相続人のみが多額の贈与を受けている場合、他の相続人から「不平等だから取得する相続財産の額を少なくすべきだ」という主張がなされることがあります。
法律上も、多額の生前贈与が「特別受益」に該当する場合は、特別受益の持戻しによって、特別受益として先に得た利益分を控除しなければならなくなることがあります。
4 揉めない相続にするためには遺言を作成
上記のように、遺産分割時に紛争が想定されるような場合は、生前に遺言を作成しておきましょう。
遺言書に誰がどの財産を相続するかということを記載しておけば、相続財産の分け方について紛争を避けることができるかと思います。
また、遺言書を作る際には、付言事項として、なぜそのような分け方をしたのかという相続人に対する想いを記載しておくことで、ご家族が遺言者に配慮をしてくれ、より紛争を避けられる可能性が高まります。