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遺言を作成するメリットとデメリット

  • 文責:弁護士・税理士 小島 隆太郎
  • 最終更新日:2023年1月30日

1 遺言でできること

遺言によって実現できることは、多岐に渡ります。

具体的には、次のようなものがあります。

⑴ 民法の法定相続分と異なる相続分の指定

⑵ 具体的な遺産の分割方法の指定

⑶ 第三者への遺贈

⑷ 推定相続人の廃除とその取り消し

⑸ 子の認知

⑹ 未成年後見人、未成年後見監督人の指定

⑺ 遺言執行者の指定

このうち、今回は、一般的に遺言作成の目的とされることが多い⑴~⑶をもとに、遺言を作成するメリットとデメリットについて説明します。

2 遺言を作成するメリット

遺言の大きなメリットは、遺言者の望む通りに財産を分配することができることです。

どの相続人に対し、どのような割合で財産を取得させるか、または、どの財産を渡すかを決めることができます。

また、相続人以外の第三者(会社等の団体も対象)に財産を取得させることもできます(このとき、遺留分などの一部制限はあります)。

これにより、遺産分割に関する紛争を防止できるという効果もあります。

3 遺言を作成するデメリット

遺言を作成することのデメリットについて、ここでは、費用の観点、及び紛争発生の観点から説明します。

⑴ 費用の観点からみたデメリット

まず、費用についてです。

遺言は、書き方等の方式が法律によって厳格に定められています。

自筆証書遺言を作成する場合、一部の例外を除き、遺言者がすべて自筆で作成する必要があります。

方式を誤ってしまうと、無効になってしまうことから、専門知識がない場合には専門家へ原案の作成、レビュー等を依頼すべきです。

その際、手数料等の費用が発生します。

公正証書遺言の場合、公証役場において、法律の専門家である公証人が作成しますので、方式の誤りによる問題は原則として発生しません。

もっとも、遺言の原案は遺言者側が作成する必要があります。

原案を公証役場に提出し、何回かのやり取りを通じて内容を確定させることが一般的です。

さらに、公正証書遺言作成の当日は、遺言者が公証人のもとへ行く必要があります(外出が困難な事情がある場合、別途費用が掛かりますが、公証人が自宅等へ出張してくれます)。

その際、証人2名の立ち合いも必要になります。

そのため、原案の作成、公証役場とのやり取り、公正証書遺言作成のコーディネートなどは、専門家に依頼すべきです。

これらを専門家に依頼した場合も、手数料等が発生します。

また、公証人に支払う手数料も必要になります。

⑵ 紛争発生の観点からみたデメリット

次に、紛争発生の可能性です。

先ほど、遺言は紛争を予防する効果があると記載しましたが、作り方を誤ると、紛争を発生させる要因にもなるため、注意が必要です。

典型的なものは、遺留分を侵害する内容で作成されている場合です。

相続人、受遺者の間で遺留分侵害額の請求がなされる可能性があり、侵害額の評価に争いがある場合には訴訟に発展することもあります。

そのほか、遺言能力に疑いがある場合、遺言の効力について争われることがあります。

特に、遺言者がかなり高齢に達してから遺言を作成すると、作成時点において認知症が進んでいた等の主張がなされ、遺言無効確認訴訟が提起されることもあります。