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遺言の失敗事例

  • 文責:弁護士・税理士 小島 隆太郎
  • 最終更新日:2023年10月19日

1 代表的な遺言の失敗事例

遺言は、相続に関する紛争を防止することなどを目的とし、遺産を誰に渡すか等について、生前に遺言者の意志で決めることができる便利なものではあります。

しかし、作り方を誤ると無効になってしまい遺言者の意志が実現できなくなってしまうことや、相続開始後に逆に相続人や受遺者との間での争いの元になってしまうことがあるので、慎重に作成する必要があります。

代表的な遺言の失敗事例としては、①形式的な要件を満たしておらず無効になる、②曖昧な記載があり相続手続等ができない、③遺産を受け取る人が遺言者より先に亡くなった場合の対策がなされていない、④遺留分の侵害が発生している、というものが挙げられます。

以下、それぞれについて説明します。

2 形式的な要件を満たしておらず無効になる

実務上多く用いられる遺言には、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。

公正証書遺言の場合には、法律の専門家である公証人が遺言を作成するため、形式的要件の不備によって無効になるということはほぼないと考えられます。

一方、自筆証書遺言は法律によって形式的な要件が厳格に定められているため、専門家のアドバイスを受けずに作成すると、形式的な要件に不備がある遺言を作成してしまう可能性があります。

その結果、遺言が無効になってしまうことがあります。

具体的には、遺言者が財産目録を除き全文自筆で記載する、正確な日付を記載する、遺言者の署名と押印をするという要件を満たしていないと、原則として遺言は無効になります。

遺言が無効になってしまった場合、相続人において遺産分割協議を行う必要があります。

そして、相続人以外の方が遺産を取得することはできなくなります。

3 曖昧な記載があり相続手続等ができない

これも、主に自筆証書遺言の場合に発生する可能性がある失敗事例です。

まず、遺産を取得させる相手(相続人または受遺者)が正確に特定されていないと、誰が遺産を取得するかを決められず、結局意図した相手に遺産を取得させることができないことがあります。

遺産の情報が曖昧な場合も、結局何を受遺者等に取得させるかが決められないということがあります。

また、不動産や預貯金口座等の記載があいまいで特定性に欠けている場合、法務局や金融機関が名義変更や解約の手続き等に応じてくれない可能性もあります。

そのほか、遺言者が高齢である場合に起きやすいことですが、文字が崩れていて判読不可能な場合にも、遺言が機能しないことがあります。

4 遺産を受け取る人が遺言者より先に亡くなった場合の対策がなされていない

通常の相続の場合(遺言がない場合)、相続人になるはずであった方が被相続人より先に亡くなっていると、その死亡していた相続人の直系卑属が被相続人の相続人(代襲相続人)になります。

例えば、被相続人の子が、被相続人より先にお亡くなりになられている場合で、被相続人の子の子(被相続人の孫)がいる場合、孫が子に代わり代襲相続人になります。

ところが、遺言においては、代襲相続は発生しないので注意が必要です。

遺言において、ある遺産を特定の受遺者等に取得させることになっていた場合で、遺言者よりも先にその受遺者等が死亡してしまっていると、その受遺者等の直系卑属が当該遺産を取得するということにはなりません。

当該遺産については、法定相続人が遺産分割協議によって取得する人を決めることになってしまいます。

このような事態になることを避けるには、遺言者よりも先に受遺者等が亡くなっていた場合に遺産を取得する方を指定しておくという方法があります。

5 遺留分の侵害が発生している

特定の受遺者等に遺産の多くを取得させてしまうと、遺留分権利者の遺留分を侵害してしまうことがあります。

そして、遺留分権利者から当該受遺者等に対し、遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。

遺留分の支払について話し合いではまとまらない場合、調停や訴訟にまで発展することもあります。