遺産分割協議書を作らないとどうなりますか?
1 遺産分割協議書の作成義務について
相続が発生し、相続人が複数人いて、遺言書がない場合、遺産分割協議書を作成することになります。
もっとも、遺産分割協議書の作成は法律によって義務付けられてはいません。
一方で、相続に関する手続きは、実務上、遺産分割協議書を作成しないと進められないものがいくつもあります。
遺産分割協議書は、どの遺産を、どの相続人が取得したかについて、第三者が確認するために用いられるためです。
そのため、相続財産を取得するためには、事実上は、遺産分割協議書を作成する必要があります。
以下、典型的なものについて説明します。
2 金融資産の解約、名義変更
銀行や証券会社などの金融機関において、被相続人の預貯金や有価証券の解約、名義変更をする場合、遺産分割協議書の提示を求められます。
被相続人の預貯金等で相続に関わる費用等を賄う必要がある場合には、早めに遺産分割協議書を作成し、解約等の手続きを行うことになります。
ただし、金融機関によっては、金融機関所定の用紙に必要事項を記入するだけで、相続手続きが可能な場合もあります。
3 不動産の相続登記
被相続人のご自宅等の不動産を取得した場合、相続登記をします。
相続登記をする場合、登記に必要な書類を管轄の法務局に提出します。
遺産分割協議書は、不動産を取得したことを証明するための資料(登記原因証明情報)として法務局に提出する必要がある書類のひとつです。
4 相続税申告
遺産分割協議書は、相続税申告の際にも用いられます。
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日から10か月以内であるため、やむを得ず遺産分割協議がまとまらない場合は、未分割のまま申告することもできます。
しかし、この場合、配偶者控除や小規模宅地等の特例等、相続税額を大幅に下げることができる可能性のある特例を適用することができないため、一時的に多額の相続税を納めなければならなくなります。
遺産分割協議成立後、更正の請求を行って未分割の状態では適用できなかった特例を適用することができます。